涙道(涙嚢)治療

涙道を専門とする医師が高い医療技術を必要とする手術です。

涙道治療

涙嚢疾患とは、涙が流れていく通路(図1)の部分に閉塞が起こったために目ヤニや涙がつまって細菌感染を起こすもので、先天性と後天性の2種類があります。
涙の大部分が蒸発してしまいますが、一部は結膜や角膜を潤したり、まばたきなどで眼頭の方に運ばれます。そして、まぶたの淵にある小さな穴に入り細い管を通って眼頭の奥にある涙嚢に入り、鼻涙管を通って鼻腔の中の下鼻道に抜けていきます。

豊富な経験と実績

新田院長は30数年間涙道疾患を専門として診療してきました。
17年間群馬大学の非常勤講師として、多くの難しい涙道疾患の治療経験をつんできました。
先天性鼻涙管閉塞は数千例の治療経験があります。
チューブ挿入術も数千例の経験があります。
難しい涙嚢鼻腔吻合術も1500件以上の手術経験があります。

涙小管閉塞の治療には特に力を注いでおり、高度な涙小管閉塞例に対するチューブ挿入術や最も難治な全涙道閉塞例に対し、新しい「結膜涙嚢鼻腔吻合術」を開発し実施しています。
多くの本に執筆し、2017年日本眼科手術学会では「高度涙小管閉塞例の手術治療」に関してシンポジウムで発表しました。
新田眼科は涙道疾患に関して、豊富な経験と実績を持っていますので、安心して受診してください。

天性鼻涙管閉塞症

不要になった涙が鼻の奥に流れていく管を鼻涙管(びるいかん)といいます。この鼻涙管はお母さんが妊娠中に涙嚢(るいのう)から徐々に下方に向かって伸びていきます。普通は鼻の奥に開いて生まれてきます。しかし、鼻涙管が本来開放するところまで伸びずに生まれてくる先天異常があります。大人はもとからある鼻涙管が閉塞するのですが、乳児では元から管が無い状態で生まれてくるのです。新生児の10%~15%の頻度で発症するといわれています。90%は片目で、10%は両目に生じます。両目の場合は、軽症な方と重症な方があります。待機している間に軽症な方は自然治癒するようです。

症 状

涙が鼻に流れないため、「涙目」となります。また、流れずにいますと涙嚢の中に細菌が繁殖して「涙嚢炎」を起こします。「目やにが続く」のは、点眼で結膜の細菌を無くしても奥の涙嚢からすぐに細菌が出てくるためです。点眼で治らないのはこのためです。

予 後

生後3ヶ月までに約60~70%は自然治癒するといわれています。その後の自然治癒率は減りますが、1才までに約90~95%は治癒するといわれています。

先天性鼻涙管閉塞症の治療

涙嚢をマッサージする方法は当院では勧めておりません。過去に他の医院でマッサージによって涙嚢が破け、細菌が皮下に回り、ひどい炎症を生じた例を見ております。治療に不慣れな保護者が行うマッサージでは加減が分からず、かえって危険と考えています。

ブジーという「金属の細い棒を鼻涙管の中に挿入して、閉塞部位を開放する方法」が広く一般に行われています。見えないところに金属の棒を進めていくため経験が必要ですが、そのほとんどは点眼麻酔で安全にできます。「ほとんど」という意味は、先天異常のため、異常の程度によっては1回で開放できないことがあるためです。

つまり、鼻涙管の末端から開放部までの距離が長いと、何も管の無いところを棒で開けても、傷を治す力で塞がることがあるのです。また、鼻涙管は複雑に中で曲がっている為に、金属の棒がうまく入って行けないこともありますが、そのような時は涙道内視鏡を鼻涙管に入れ、内部を観察しながら閉塞部を開放する方法を用いています。
又、閉塞がとても強い場合、開放後に「シリコンチューブ」を約2週間挿入し、留置する方法もあります。これでほぼ治りますが、どうしても開放不能な場合、入学前後くらいに手術を行う患者さんが数年に1人います。

【両眼にシリコンチューブを挿入して治った例】
両眼にシリコンチューブを挿入して治った例

ブジーの時期

いつどのように行うのが良いかについて、専門学会でも明確な決まりはありません。医師の経験と考えによって異なります。以下は新田院長の考えになります。

3ヶ月以内

自然治癒する可能性が高いため、待ったほうが得だと考えています。また鼻涙管が狭いため、ブジーをしにくいという不利があります。

3~6ヶ月

まだ自然治癒する可能性が高いことと後で述べる「敗血症」という合併症に対して体力が弱いことも考え、まだブジーは待ったほうが良いと考えています。 ただ、固定しやすいということで、この時点でのブジーを行う医師も多くいます。

6~12ヶ月

自然治癒の可能性が徐々に低くなることと、成長するにつれて、動きが活発になるため固定が難しくなります。ブジーが正確に出来にくくなる不利を考え、新田眼科では6ヶ月過ぎたらブジーを行うようにしています。敗血症に対する体力も付いてくる時期です。実際の治療時間は2~3分ですので、1回は局所麻酔でブジーを行うのも良いのではと私は考えています。「痛くはないのですか?」とよく質問されますが、最後の閉塞部位を開放するときだけは多少痛い可能性があります。予防接種の注射と同じとお考え下さい。

12ヶ月以上

自然治癒を期待して1才過ぎまで待つ医師もいますが、固定が困難になるため正確なブジーが不可能になってきます。固定が困難な場合は「全身麻酔下」で行うこともあります。欧米では「1才以上まで待って全身麻酔下でブジーを行う」のが、一般的なようです。現在は麻酔科の進歩により乳児の全身麻酔も比較的安全にできるようになりました。
2歳くらいまで待機しても自然開放がなく、全身麻酔で治療を希望される場合は、麻酔科、小児科、涙道専門医のいる病院への紹介も可能です。また、伊勢崎佐波医師会病院と連携し、新田院長が病院に出向いて、全身麻酔下の治療も可能になりました。

ブジーの合併症

最も危険な合併症は「敗血症」です。「敗血症」は細菌が血液中に入り、高熱が続き全身の臓器に障害を生じる病気です。鼻涙管の末端にいる細菌をすべて無くすことはできません。どうしても細菌のいるところを金属の棒で開放するわけですから、傷から細菌が血管に入り全身に回り「敗血症」を生じる合併症がごく稀に生じます。
私は涙嚢の専門家として30数年間ブジーを行ってきましたが、確定した「敗血症」例を1例、疑い例を1例経験しています(約数千例に1例)。体力の付く6ヶ月まで待つのと、抗生剤の内服を処方するのはこの予防のためです。大きくなるまで待って全身麻酔で行ってもこの危険をゼロには出来ません。発熱が初期症状なので、早期に 小児科を受診し、適切な処置を受けることで治療することは可能です。

天性鼻涙管閉塞症

後天性は、はっきりした原因は分かっていませんが、副鼻腔炎(蓄膿症)、強いアレルギー性結膜炎、はやり目、ヘルペス、外傷などによって起こると考えられています。 まれに顔が変わるくらい腫れる急性涙嚢炎も起こるので注意が必要です。
又最近ではTS-1などの抗悪性腫瘍薬による副作用として、涙道(特に涙小管)閉塞が増加しています。

後天性鼻涙管閉塞症の治療

初期の場合、柔らかいシリコンチューブを涙点から閉塞部まで3〜6ヶ月留置する治療で治ります。この処置は外来で約10分で済み、傷も残りません。新田眼科は涙道内視鏡という直径0,9㎜の内視鏡を用い、正確なチューブ挿入術を行っています。この3年間でチューブ抜去後6ヶ月以上の観察で通水可能になっている症例は95%でした。

しかし、チューブも万能ではありません。チューブを抜いた後に再閉塞する場合、最初からチューブが挿入できないくらい重度に閉塞している場合は、涙嚢と鼻腔を直接つなげるバイパス手術(涙嚢鼻腔吻合術)を行います。この治療で約99%は1回で治せます。

全涙道閉塞という最も重症な閉塞には、「結膜涙嚢鼻腔吻合術」があります。新田院長が開発した新しい方法で、2017年日本眼科手術学会のシンポジウムで報告しました。

検査の内容とその必要性について

涙の流れのどこで閉塞しているかを確認しないと、治療法や予後についての説明ができないため、最初に涙管洗浄をする必要があります。水が喉のほうへ行かないのは、どこかで詰まっています。
この状態の場合ブジーを挿入し、閉塞部位を確認します。ブシーによる検査では、閉塞部位の強さや長さ、複数か所の閉塞がないか十分に調べます。
そして閉塞部位に応じた治療方針を立てます。

塞部位別の治療

涙 点

涙 点

通院で、出口を拡大する処置を2~3回することで治ります。たびたび再閉塞する場合、細いチューブを1~2週入れておけばほぼ治ります。

涙小管─閉塞が2mm以下の場合と鼻涙管が軽度閉塞の場合(チューブ挿入術)

ブジーという細い棒を通すだけでは一時的な効果しか得られなく、すぐに塞がってしまいます。幸い閉塞している距離が短いため、シリコンでできた柔らかいチューブをおよそ3ヶ月入れることにより、約90%は治ります。チューブはとても柔らかいので、黒目を傷つけることもありませんし、ゴロゴロもしません。
外来で局所麻酔下に、10~20分で可能です。多少の皮下出血や鼻出血がありますが、すぐに消えますので心配ありません。皮膚に傷も残りません。抜くときは、目頭のチューブの端をつまんで引き出すだけですので、短時間で痛みなく終わります。これ以上閉塞部位が長くなると、チューブでの治癒率が大幅に悪くなるので、このくらいのうちに治療を受けることをお勧めします。

チューブ挿入術
チューブ
チューブ挿入術

チューブが挿入されている状態。柔らかく表面が滑らかなので角膜は傷つかない

涙小管─比較的長い閉塞の場合(涙小管形成術)

涙小管は12mmくらいありますが、涙点から8mmくらいで閉塞している場合、通常のチューブ挿入術では治せないことがあります。当然、涙道内視鏡を用いますが、涙小管トレパン(閉塞部を金属の管で打ち抜く)や半導体レーザーなどを駆使して元の涙小管を再生させます。非常に難しい手術です。最近3年間で15例の経験がありますが、12例は通水可能となっています。

シリコンチューブを3~6ヶ月留置します。チューブがあるうちはよいのですが、抜いたあとに再閉塞しやすく、もともと直径1mmにも満たない細い管なので、再癒着しやすいのです。しかし、待っていても閉塞部位が長くなればなるほど、治癒率が下がるので、早めにチューブを入れるほうがよいと思います。外来で局所麻酔にて20~30分で治療可能です。次の手術と比べ侵襲がとても軽いので、この方法で治せれば患者さんにとって大変に良い方法です。この方法で治らない場合は次の「結膜涙嚢鼻腔吻合術」という最も難しい手術が必要になります。

涙小管閉塞の開放術

ブジー、トレパン、半導体レーザーを用いた涙小管閉塞の開放術

涙小管閉塞部を開放する最新の手技

涙道内視鏡に金属の筒(シース)をかぶせて、観察しながら涙小管閉塞部を開放する最新の手技

チューブを片方から挿入固定する高度な手技

上下の片方しか開放できない場合、チューブを片方から挿入固定する高度な手技

強固な鼻涙管閉塞の場合 涙嚢鼻腔吻合術

鼻涙管の閉塞が強固な場合はチューブでは無理です。根治治療として涙嚢鼻腔吻合術が古くからおこなわれてきました。入院して手術が必要です。手術は、新しく涙嚢から直接鼻の中へ涙を流すバイパスを作るものです。具体的には眼鏡の鼻当ての所の皮膚を縦に2cmほど切開します。鼻の骨を取り除き涙嚢と鼻の粘膜をつなぎ合わせ、トンネル状の通路を作ります。手術時間は約30分です。

顔の中央でドリルの音を聞くのは大きなストレスですので、全身麻酔で行います。皮膚の傷跡は心配するほど目立ちません。手術成績は99%が1回で治癒します(鼻外法)。この方法と似た手術で、皮膚を切らずに逆に鼻の中からトンネルを作る方法(鼻内法)も行われています。この鼻内法は皮膚に傷を残さない点はよいのですが、鼻腔内が広い人にしか行えない点と、骨が厚い場合に時間がかかり(約1時間)、成功率も大体90%と劣ります。

3ヵ月間は月1回の通院。3ヵ月でチューブを抜き、その後年2回くらいに通院をしていただきます。1年後には通院が不要となります。

涙小管閉塞の開放術

涙嚢鼻腔吻合術 鼻外法

涙小管閉塞部を開放する最新の手技

涙嚢鼻腔吻合術 鼻内法

度な全涙道閉塞

涙小管を含む高度な涙道閉塞は最も難しい手術です

涙道閉塞手術

左目にジョーンズチューブが挿入されています

ジョーンズチューブというガラス製の管を目頭から鼻腔まで永久留置する方法があります。1964年から世界中で行われている標準的な方法です。通常の涙嚢鼻腔吻合術と同様な手術で行えます。ただし、脱落、埋没、位置の補正などの合併症が約50%に生じます。また、一生の通院管理が必要になります。

結膜涙嚢鼻腔吻合術

結膜涙嚢鼻腔吻合術手術

結膜涙嚢鼻腔吻合術手術後 綿棒が入るくらいの新涙道が形成されています

院長が開発した新しい手技で行っています。2017年の日本眼科手術学会のシンポジウムで院長が発表しています。約80%は通水可能となり流涙が改善しています。
最大のメリットは、ジョーンズチューブのようなガラス管を永久留置しないため、一生の管理が不要になることです。

一方で、手技がやや難しく、手術時間がジョーンズチューブの2倍かかります。涙嚢が極度に小さい場合はこの手術ができない場合もあります。まれに結膜癒着による眼球運動制限、複視(物が二つに見える)が生じることがあります。

治療前の涙の量

治療前の涙の量

治療後の涙の量

治療後の涙の量

療時期を逸さない治療選択を

手術を受けるか迷っている間に、涙道の閉塞は悪化していく一方です。自然治癒は期待できません。
最初は、外来で治療可能な「チューブ挿入術」を行ってみて、もし治らなければ「レーザー涙嚢鼻腔吻合術」を外来で行う。それでも治らなければ、入院して全身麻酔で、骨を大きめに削る「涙嚢鼻腔吻合術」でなおす。このような順番で考えていくとよろしいかと思っています。最後まで治らない涙道閉塞はほとんどないという希望と、手術を受ける勇気をもって、手術を考えていただきたいと思います。

用について

70歳以上(1割負担) 70歳以上(2割負担) 70歳未満(3割負担)
チューブ挿入術 5,000円 10,000円 15,000円
涙小管形成術 14,000円 14,000円 57,000円
涙嚢鼻腔吻合術(入院) 57,600円 57,600円 180,000円